「俺は神に感謝したい気持ちでいっぱいだね……俺の孔雀がキレイなままだったなんてな」その意味ありげなキレイという言葉にオリヴィエは、引っかかりながらやっとの事で緑の目を見つめて言い返した。
「何度も言うけど、ワタシは普通なんだよ。男を抱きたいとも抱かれたいとも思わないんだ。親方に知らせるならばそうすればいい。死んだって香港になんか帰るもんか」
それだけ言い捨てるとオリヴィエは立ち上がった。
「支給の仕事、ここですればいい、お前を男娼として店に出すつもりは無い」
オリヴィエの背中に緑が言った。
「アンタの目はワタシを欲しがってる。自分のモノにしたいんだろう。そんなとこで働くバカがどこにいるよ、他の店を当たるよ、悪かったね、時間取らせて」
オリヴィエは振り返らずにそう言うとドアを開けて部屋を出た。
「四馬路のどこにもお前を雇う店は無い、南京路でも。上海中、どこにも。まっとうな支給係の仕事はもうお前にはできない、この美楽園以外ではできない、俺はお前を逃がさない」
ドア越しに緑の叫ぶ声がした。
◆NEXT◆