2010年5月の新刊です。小説本。

* ベルナルドルート、HAPPY END後のクリスマスのお話です *



2010.5.2 発行
A5版/48P/FC/オフ/400円




*抜粋1*

 昨日の夜中近く、俺がシャワールームを出ると、ちょうどベルナルドが帰って来たところだった。夕方から別行動していて、ヤツはどこかに部下と一緒に出かけていた。
 俺の姿を見ると、抱えていたリボンのかかった箱からひらひらする何か長い服を取り出して広げて見せた。俺は初めて見るそのエキゾティックな模様や形に「おかえり」を言うのも忘れて見入ってしまった。
 次々と髪から落ちる滴をタオルでふきながら立ったままでいると、ベルナルドは機嫌良く笑って俺の目の前まで来るとまたひらひらと服を振って見せた。
「キモノ・ガウンだよ、ジャン。日本の物だそうだ。プレゼントするよ。着てみるかい? 絹だから肌触りがすごくいい」
 俺は手渡されたキモノ・ガウンを撫でてみた。柄がまたエキゾティックだった。ペリカンに似てるけれど、この白い鳥は赤いベレー帽を被って嘴が細長くて、そして脚がかなり長かった。何て鳥だろう。いいか、白ペリカンで。
「へぇ、白ペリカン、キレイじゃん。グラッツェ、ベルナルド。これ寝間着にも良くね? 今日はこれ着て寝ようかな」
 まだ身体が濡れているけど誘惑には勝てず、肩に掛けてみる。ふわっと絹が触れて首筋がくすぐったい。首をすくめるとベルナルドが後ろから抱きすくめて来た。呼気にウィスキーと煙草の匂いが混じっている。
「いいね、絹は素肌に着るものだしね」
「ああ、そうなの? ふーん」
 なんだかヤバい雰囲気。今日もまたヤりたいのかなー。そんなにイイのか? 俺は。
「お前の場合は脱がせた中身も絹みたいな極上の手触りだけどね、ジャン」
 耳元で囁かれる低い声に、腰の辺りが痺れて急激に張り詰める感覚がする。
「へぇ、そうなの。自分じゃ分か、らないけど…っ! …ベルナルドっ!」
 乳首を絹でくるまれて弄られ始めていた。目をキツく閉じて息を詰め、身じろぐと完全に拭き取っていなかった湿った身体にキモノが貼り付いているのが分かった。
「いいね、身体の線が良く見える。ここの線、非常にそそられるね……」
 背中から尻の下までを撫でながら押し倒すとベッドを軋らせて覆い被さり、キスしてきた。キス――というよりも、舌で唇をつつく事を繰り返す…そんな煽るみたいなヤツだ。嫌だ。俺がベッドで欲しいのはいつものあのキスだ。意識が飛びそうになる、あの。






*抜粋2*

 ベルナルドが髪をかきあげる。その拍子に、親指に嵌ってるゴツい指輪のピーコックグリーンの冷たい輝きの石が光った。
 ――考えてみれば、コイツの持ち物は黒眼鏡の地味な印象に似合わない派手目のモノが多い。車はコンバーチブルの真っ赤なピカピカのアルファロメオ。ライターだって金無垢。親指には大きなアレキが嵌ったゴツい指輪。
「ベルナルド、お前の持ち物って結構派手だよな」
「…そうか?」
「ルキーノのライター、プラチナだけど地味じゃん、鈍い銀色でデザインもシンプル。あれ、錫と見た目は変わらないぜ」
「ヤツ自身が派手だからな…見た目も行動も。だからバランスが取れていいんじゃないか?」
「ベルナルドおじさんは、自分が地味だっていう自覚があるわけ?」
「…おまえはどう思ってる?」
 ――また質問返しかよ。



*本文見本/A5二段組です。




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