湖 の 伝 説
〜forever with you〜

written by
少佐んちのひなさま


 聖地には一つの伝説があります。森の中にひっそりとある、小さな湖。
この湖のほとりで、女の子の告白からうまれた恋人たちは永遠にしあわせになれる・・・

 アンジェリークは今日も一人で、森の湖に来ていました。今日は、今日こそは、この湖のほとりで、あの方にこの胸の内を打ち明けよう。この湖に伝わる伝説の力をかりて・・・

そう思って、ここに来るのは、もう何日になるでしょう。
「あの方に会いたい。」
その想いを込めて湖のほとりの滝に願いをかけます。

「よお、お嬢ちゃん、会いたかったぜ。」
「あ・・オスカー様。ぐ、偶然ですね。」


「ああ、アンジェリーク、お散歩ですか。」
「ルヴァ様、偶然ですね。」

「あら、アンジェリーク、どうなさいましたの?こんなところで。」
「ろ、ロザリアこそ・・・」
あの方は、なかなか来てくれません。

今度こそ!(握り拳っ)
「ここへ来れば、あなたに会えそうな気がしたのですよ。アンジェリーク。」
「リュミエール様、偶然ですね・・」

「私も、そなたに会いたいと思っていたのだ。アンジェリーク。」
「ひえ〜、ジュ、ジュリアス様、ごめんなさいー。」

「なんだよ、こんなとこでボーっと、してやがってよぉ。」
「・・・ゼフェル様・・・(T-T)」

「スカっ。何も起こらなかったみたいね。」

「あら、アンジェリーク、どうなさいましたの?こんなところで。」
「・・・・ぼろっ・・・」

えーーーん、どうしてあの方は現れないのよーーー! 私の想いが足らないのかしら・・・ううん、そんな事はないわっ。今度こそっ!
「スカッ」
「スカッ」
「スカッ」
「あーん、どうしてオリヴィエ様は来てくれないのよー!オリヴィエ様のバカーーー!」
オリヴィエ様に会いたい。そして、この胸の内を打ち明けたい。この願いが、あまりに叶えられないので、アンジェリークは、とうとうヤケを起こしてしまいました。

「ハーイ、アンジェリーク。どうしたのさ、そんなに荒れちゃってさ。それに、この私をバカ呼ばわりするなんて、あんまりじゃない。」
突然、後ろからいつも心に響いている、憧れのあの方の声が。
一瞬の内に、身が凍りついたアンジェリーク。おそる、おそる声のした方を振り返ります。
「きゃあああ、オリヴィエ様、いつの間にー。」
そこには、アンジェリークの想い焦がれていた、あの方、憧れのオリヴィエ様の凛々しいお姿が。
「なによ、人をオバケみたいに。」
オリヴィエ様の言葉も、もうアンジェリークの耳には入りません。

こんな形で・・・なにもヤケをおこして大声を上げている時に・・・しかも、よりによってオリヴィエ様の悪口を言っていた時に、現れなくたっていいじゃない・・・
アンジェリークはくらくらと、眩暈をおこして倒れ込んでしまいました。

そんなアンジェリークをオリヴィエ様は優しく抱きかかえてくれます。ああ、憧れのあの方の大きくて深い懐。外見からはちょっと想像できない、たくましい胸。なんて気持ち良いのかしら・・・オリヴィエ様に抱きかかえられながら、アンジェリークは深い、深い、永遠の眠りについたのでした・・・


少佐>どげしっ! をい! アンジェを死なせてどおする。死なせてっ!
ひな>いいぢゃない、たまにはこういうのがあっても。
少佐>ダメッ! 却下!
ひな>ちえー
…というわけで、お話はまだまだ続きます。


「ちょっと、しっかりおしよ。しょうがないね、この眠れる天使様は。王子様のくちづけでもなきゃ、目を覚まさないかね、こりゃ。それでは・・・」
そう言ってオリヴィエ様はアンジェリークに顔を寄せていきます。
オリヴィエ様の声に、アンジェリークはやっと、意識を取り戻しました。
目を開くと、目の前にオリヴィエ様のお顔のどアップが・・・
「ええっ、うそぉ。きゃあ、ごめんなさいーーーっ!」
アンジェリークは思わず、両手でオリヴィエ様を突き飛ばし、どぎまぎしながら、飛び起きました。
「あたたた。うふふ、倒れたり、飛び起きたり、ホント、忙しい娘だネ、アンタは。」
オリヴィエ様はくすくす微笑んでいます。
「そ、そんなぁ」
アンジェリークは、おろおろするばかりです。
「でさ、さっきはどうしたワケ?なんかワタシの悪口が、聞こえたような気がするケド。」
ガーン!!聞かれてたー。どうしよーー。
アンジェリークはショックで、目の前が真っ暗になってしまいました。想い続けるオリヴィエ様に、この胸の内を打ち明けようと何度も何度も、この湖に来てお願いをしていたのに、オリヴィエ様の耳に届いたのが、この苦しい胸の想いじゃなくて、よりによって、心にもない悪口だったなんて。もう私、どうしたらいいか、わからない。
いつのまにか、アンジェリークの目から大粒の涙がこぼれていました。涙と悲しみが、とめどなく溢れてきます。とうとう、アンジェリークはオリヴィエ様の顔を見られなくなって、背中を向け、泣きだしてしまいました。
「おやおや、今度は泣きベソかい。今日は百面相だね。」
オリヴィエ様はそう言いながら、そっとアンジェリークの肩に手を回して、慰めてくれます。そんなオリヴィエ様の優しさに包まれて、どのくらい泣き続けたでしょうか。やっとアンジェリークの涙もおさまってきました。

「気がすんだかい?そんなに泣いちゃアンタの可愛い笑顔がだいなしだよ。さ、笑って、笑って。そうだ、アタシがお化粧してあげよっか。」
オリヴィエ様はニコニコ微笑みかけながら、励ましてくれます。そんなオリヴィエ様の笑顔につられて、ちょっとだけ、アンジェリークにも笑顔が戻って来ました。
「そうそう。アンタには笑顔が一番。忘れちゃダメだよ。ところでさ、何か悩みがあるんじゃない?随分、思い詰めてたみたいだったけど。話してごらんよ。思い詰めるのは、お肌によくないからさ。」
「だって・・・・・」
この核心をつく、オリヴィエ様の言葉に、再びアンジェリークは、湖の水面を見つめて、黙り込んでしまいました。だって、何度も、何度も一所懸命お願いしたのに、オリヴィエ様、全然来てくれなかったじゃない。この湖のほとりでお会いして、この胸の想いを打ち明けようと決心したのに・・・

「好きです。オリヴィエ様。好きです。大好きです。」
心の中では何度も、何度でも言える言葉、いえ、もう言わずにはいられない言葉が、どうしても、口にできないのです。

風もなく穏やかな森の湖、別名「恋人たちの湖」鏡のような水面は、「好きです。大好きです。」一所懸命、言葉に出そうと、心の中で叫び続けるアンジェリークと、それを優しく見守るオリヴィエ様の姿を写し続けていました。

ユラユラ。

水面に写っていた、アンジェリークとオリヴィエ様の姿が波紋によって、揺らめきました。
「あら。」
水面の自分達を見つめていた、アンジェリークは、波紋の来た方に目をやりました。
「まあ、可愛い。」
そこには
 1=「白鳥幼稚園の小旗」を持った、
 2=引率の先生白鳥と、
 2
 2
 2=3羽のひなが
一列に並んで泳いでいて、その波が二人の姿を揺らしていたのでした。
「ホーント。それにね白鳥の『白鳥幼稚園』なんて何だか微笑ましいじゃない。」
先生白鳥と3羽のひなの姿が、落ち込んでいたアンジェリークの心を、少しだけ解きほぐしました。アンジェリークとオリヴィエ様は、しばらく白鳥さん達を見つめ、心を和ましていました。


すると、その時です。白鳥さん達の後ろから、何やら黒い影が近づいて来ました。
「あら?なにかしら。」
アンジェリークは目を凝らしました。
「きゃあ!ワニよ、ワニ!」


少佐>ちょっと待てぃ! なんで聖地に、しかも森の湖にワニがいるのよ、ワニがっ!

ひな>ちっちっちっ。だって川には滝、海にはサメ、湖にはワニってのが物語を盛り上げるオヤクソクってモンでしょうが。
少佐>・・・・・ええ、そうでしょうとも。さっさと続きを書く、続きを。


「どうしよう、白鳥さん達が食べられちゃう。オリヴィエ様、助けてあげて。お願い。」
アンジェリークがオリヴィエ様の胸にすがりました。
「でもねぇ、ワニだって食事しなけりゃ生きていけないし白鳥も食べられてしまえば、それが運命、食物連鎖、自然の摂理ってモンだけどね。」

「それは、そうだけれど・・・

やっぱり、かわいそうです。助けて、オリヴィエ様。」

「なにも食べられるって、決まったわけじゃないし、こういう危機を乗り越えなきゃ、厳しい自然の中では、生きていけないよ。」
諭すように言うオリヴィエ様に、

「もういいです。オリヴィエ様、冷たい。大嫌いっ!」
そう言い残すと、アンジェリークはそのまま、湖に飛び込んでいってしまいました。

アンジェリークは白鳥さん達を助けようと、夢中で泳ごうとします。でも、服を着たままなので、思うように泳げません。それどころか、よくよく考えてみたら彼女は・・・泳げないのでした。


 少佐>んなこと、あるわけないでしょう!(睨み)
 ひな>いいの!話が盛り上がれば、それで。


「白鳥さん達を助けたい。」夢中で飛び込んだのは良いけれど、自分が泳げないのを思い出したアンジェリークは、途中でパニックに陥ってしまいました。幸いにも、白鳥さん達はアンジェリークの飛び込んだ音に驚いて、遠くに逃げていきました。でも、ワニの方は若くて、ピチピチした、美味しそうな「女子高校生」が、飛び込んできたのに気がついて、しっぽを振って近づいてきます。アンジェリークも迫り来るワニに、大パニックです。
「きゃあ、食べられちゃう。」必死に逃げようと、手足を動かしますが、全然進みません。
「ああ、もうダメ・・・・」
アンジェリークは、力尽きてしまいそうです。

「まったく、しょうがない娘だね。世話がやけるったら、ありゃしない。アタシの舞で、アンタの暗黒をとかしてア・ゲ・ル 無限の舞!」見るに見かねたオリヴィエ様が呪文を唱えました。
すると、彼の艶気に魅了されたワニは、身も心もすっかりオリヴィエ様の虜になってしまいました。
「ああ、この魔法はこんな時に使うんじゃないんだけど。ま、しょうがないか。愛しいアンジェリークのため、だもんね。」
オリヴィエ様は片手で頭を抱えながら、苦笑しました。
「おおい、ワニくん、そこのカワイイ娘さんを、ここまで運んできておくれ。」

「ううん」

やっとアンジェリークは目を覚ましました。
「大丈夫かい?ホント、無茶するんだから、この娘は。だから、放っておけないんだケドね。」
目の前に優しく微笑むオリヴィエ様の顔があります。「お、オリヴィエ様ぁ。」
さっきまでの事が頭の中を駆け巡り、アンジェリークはオリヴィエ様に必死にしがみつき、また、泣き出してしまいました。
「ああん、怖かったです、怖かった。ひく。」
「もう、大丈夫だからさ、アンジェリーク。」
オリヴィエ様はキュっと、アンジェリークの身体を抱き締め、優しく彼女の髪を撫でました。オリヴィエ様のたくましさと優しさにつつまれて、アンジェリークの胸の奥につまっていたものが、一気にこみ上げてきました。

「好きです、オリヴィエ様。大好きです。」

いままで、どうしても出て来なかった言葉が自然に、オリヴィエ様のもとに届けられました。

「アタシも大好きだよ、アンジェリーク。だからもう、こんな無茶はしちゃダメたよ。」
「はい。オリヴィエ様。ごめんなさい。えっ?オリヴィエ様、今なんて・・・」
「聞こえなかったのかい?もう、アタシをハラハラさせるような無茶なまねはしないでって」
「いいえ、その前に・・・」
「大好きだよ。アンジェリー・・」
思いがけない、いえ、夢にまで見た、幾度も、幾度も夢に見た、夢でしか聞けなかった言葉・・・
アンジェリークは夢中でオリヴィエ様の返事が終わらぬうちに、自分の口唇で、彼の返事を遮っていました。そして、自分の夢を確かめるように
「あの、もう一度聞かせて下さい・・・」
「大好きだよ。」
次に夢じゃないのを確かめるために
「あの、もういち・・・」
今度はオリヴィエ様の口唇が、アンジェリークの問いを遮りました。
「何度でも言ってア・ゲ・ル。大好きだよ。ア・イ・シ・テ・ル。アンジェリーク。」
「私も。大好きです。愛しています。オリヴィエ様。」

そして、強く、強く抱き締めあう二人。アンジェリークとオリヴィエ様の囁きが、静かな森の中に、いつまでも響いていました。

・fin・


ひな>あれ、あれれ、あー、オチがないっ!これぢゃ、どこにでもある、普通の「おり餡」だぁぁぁ

こんな結末になるはずじゃ、なかったのにい。ええい、こうなったら、このまま第二部、18禁の

世界になだれ込んでやるう!

少佐>どげしっ!ばきっ!ええい、やめんかぁ!神聖なる、とらじゃ様の世界に、そんな事するんぢゃない。「神星無双大将軍っ!封印。」


●このお話は、「とらじゃが12222を踏んだら、ひな様がお話を書いてくださる」というBBSでのオヤクソクにより、書いていただいたものです。…というわけで、12222 という数字を、ひな様がお話の中に入れてくださっています。私はちょうどその時、高熱で唸っておりましたが、なにげにアクセスしたところ、首尾良く12222をゲットしたのでした。(ネット中毒に感謝!)
変則的激甘アンジェ×オリヴィエ、ありがとうございました。ドツキ漫才もありがとうございます〜〜。笑いましたですーー。(^^)(少佐様とひな様はご夫婦なのです)


■CHERISHへ■