「おお、これがその壺でございますか? 見せて戴いてもかまいませんか」
と言うと、伯爵の返事も待たずに壺を手に取る。高さは六十センチ位、薄い桃色をしたその壺の中心に例の白い桃の花の下に微笑む桃鄭桜という少年が描かれている。
「美しい……少年でございますね」
とリュミエールはオリヴィエの横から、チラリとその壺を見ると呟いた。
「そう真に美しい少年です、貴方たちと同じ位に……」
伯爵は意味ありげに言った。オリヴィエは壺を元に戻すと、リュミエールの隣ではなく、伯爵の隣に座った。
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