◇水夢骨董堂細腕繁盛記◇
春の章/弐


 パタンと水夢骨董堂のドアが閉じられると、リュミエールはクルリとオリヴィエの方に向き直った。
「オリヴィエ、どうして壺をわたくしがお届けにあがらなくてはならないのですか? 配達は貴方の役目では?」
「べ、別に他意はないよ〜、ほら、伯爵の館には西洋の絵なんが一杯飾ってあるんだって、見せて貰えば? アンタ好きじゃない」
「本当にそれだけ?」
「あ、ああ、そーよ」
「絶対に?」
「う、うん」
 オリヴィエは目を反らす。
「痛い目にあいたいらしいですね?」
 リュミエールは指をパキパキと鳴らすとジーッとオリヴィエを睨み付けた。

 

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