◇水夢骨董堂細腕繁盛記◇

春の章/扉


 



 
時は一九二五年、春爛漫の上海。とは申しましても、皆様よくご存じの世界とは、少々時空が異なっておりまする。
 英吉利、仏蘭西、伊太利亜、広東、福建、揚子江、国の名や地名は同じでも、この物語の舞台と相成りますのは私どもの世界とは髪一筋ほどずれたところでの物語。
 黄浦江の辺りより始まる上海のメインストリート・南京路と交差する四川中路、東に少しばかり入った裏通りに水夢骨董堂という、骨董屋とは名ばかりの西洋人相手の土産物屋のような小さな店がございました。


 


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