花影追憶
◆第二章  美梦◆



(いつもと違う!)

 オリヴィエは周をはね退けて壁際に逃げる。

「オリヴィエ、お前はいい金蔓になると思って拾ったんだが、儂はお前が好きだったさ、五つの時から五年……寝姿だけで十分金儲けはさせて貰ったが、儂は本当の息子のようにお前が可愛かった。いや……綺麗事は言うまい。儂はお前に惚れているんだ。もうあと五年もすればどんなに綺麗な男になるだろう……」

 周は泣き顔になりながら呟く。

「じゃあ断ってよ、ワタシは亜米利加なんか行きたくない」

「今までだって普通の客なんざ相手にしなかったが、あの亜米利加人には逆らえないんだ。いろいろと大人の世界には事情ってもんがあるんだ……あの男に売る前に儂が教えてやるよ……こっちに来い」

「いや……いやだっ」

 捕まれた腕を振りほどこうとしたオリヴィエの手が周の顔面に当たる。

「痛っ。くそっ、言うことを聞け!」

暴れるオリヴィエの頬に周は平手打ちを食らわせた。今までどんな事があっても顔だけは殴らなかった周の態度にオリヴィエは恐怖を覚えた。

 


◆NEXT◆